弥太郎さんをなだめる

筑摩書房刊「明治文学全集」は全集の値崩れ激しい現代でも、ある程度の相場を保っています。

編纂方法に筋が通っていて、他に代えがたい内容だからでしょう。

その中の一冊、「明治記録文学集」に収録の横山源之助著「明治富豪史」は関係者からの聞き書きが貴重で、面白いです。

三菱創始者の岩崎弥太郎が癇癪を起こすと家では誰もなだめられず、家中戦々恐々で手がつけられなかったとか。そこで、弥太郎の気性を飲み込んだ芸妓が夜中でも本郷の屋敷へ、人力車差し回しで呼ばれたそうです。

部屋に入ると百目蝋燭を4,50本、明々と灯した中に弥太郎が一人あぐらをかいてうつむいて黙って座っていて、前に銚子が何十本も並んでいる、という殺伐とした光景だったそうです。

大富豪になるような人は、なかなか気難しいのでしょうね。このお姐さんは酒の相手をしながら上手に弥之助の気持ちをほぐしたと書いてありました。


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