音楽と政治の両立
仕入れた本の中に、「音楽 人生の喜び」エドワード・ヒース著がありました。
1970年から4年間、イギリスの首相を務めたヒースさんが書いた、音楽を中心とした、政治家としての半生記です。
日本にも、オペラがやたらと好きな政治家がいましたね。小泉純一郎元総理。この人も一冊、音楽の本を書いてますが、残念ながらヒースさんの本の足元にも及びません。そりゃ、ヒースさんはもともと音楽の専門教育を受けて、正式なオルガニスト、合唱指揮者になりかけた人なのですから、比べては小泉さんが気の毒でしょう。
これは、音楽の専門家以外が書いた音楽書としては、私は、ドナルド・キーンさんの著作以上にすばらしいと思いました。オペラ愛好家としてのキーンさんの本は立派ですが、ヒースさんは作曲の能力と、演奏能力が備わっている分、説得力が違います。
何よりも、音楽に対する敬虔な崇拝の念が伝わってくるのです。
パルビローリの晩年の演奏の危うさを指摘したり、ブラームスの交響曲の中では2番の物足りなさを論じ、ディーリアスでは、「パリ」、「コアンガ」組曲を評価するなど、見識の高さは、並みの音楽家を大きく抜いています。
ヒースさんは首相在任中に、イギリスのEC加盟を実現し、現在のEUへの道筋をひらいた政治家ですが、混迷のEUの今の姿を見られたらどう思われるでしょうか。
未読の方に強くお勧めします。
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2012年2月23日 | コメント/トラックバック(0) |