大宅壮一さん再読

先に直木三十五の事をちょっと書きましたが、大阪出身の物書きと言えば、大宅壮一を読む人も減ってしまったようです。

生前は大変な影響力を保持し、「駅弁大学」や「一億総○○化」「男の顔は履歴書」などという流行語も生み出し、没後は30巻に余る全集も出された割に、求める人が少ない気がします。

この人が沢山書いた、ある時期のある分野を概括した見取り図的な評論(旅行記を含む)は、今読んでも十分面白く、未来予想の類はある射程の中ではかなり的中していると思います。

文章に人を呑んだような開き直りとユーモアがあり、憎めないところが腐っていません。市井の細かいところに目が届いてます。

ちょっと読んだ「インチキ広告裏表」という評論も、広告の歴史をたどりながらその胡散臭さを揶揄し、所々に実例を挙げて実態を紹介すると同時に、その一端に加担している自分も糊塗せずに告白しています。曰く、インチキに用心せよと。

昔はこんな広告があったらしい。

「大金に達する道を知らんとするには、郵券十銭送れ、詳報す」

十銭くらい大したことないと思って送るとハガキが来て、それには東京駅を下車してから日本銀行に行く道順が印刷されていたとのこと。

ユーモラスで愛嬌がある、と大宅さんは褒めています。


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