茂吉の一面

斎藤茂吉について書きましたが、まだ面白いことはいっぱいあります。有名ですが、長男の斎藤茂一のお見合いの席で出されたうな重(どんぶりかも)を見合相手のお嬢さんのと見比ベて、そちらの方が大きかったので「代えてちょーだい」と言って取り替えたり、息子の北杜夫の勉強を見ていて、息子が忘れた単語を自分も忘れていて、それを怒りながらもついに思い出して、さらに怒ったそうです。



最上河畔に行ったとき、お付きの人が「もう白逆浪が立っている」と言うと「誰もこの言葉を使ってはならぬ」とお弟子たちに命じたが遠くにいた結城哀草果には聞こえなく、彼が「白逆浪」を使った短歌を作ったので口惜しくてならず、ついに「逆白波」という言葉を作って名歌を詠んだはなし。



ヨーロッパ留学の時、どこか(ドイツ?)の都市の公園で男女の抱擁接吻に出くわし、木に隠れて一時間ばかり接吻を眺め、酒場に入ってビールを続けさまにあおりつつ「どうも長いなあ、実に長かったなあ」などとつぶやきながら頭を抱え込んだりした話。



戦後、会津八一の書展を訪れて芳名録に署名をするとき、筆を硯に何度もつけては取り直してなかなか筆を持ち上げない、持ち上げたかと思うと芳名録の上に筆を構えてなかなか下ろさない、やっと「斎」の最初の点を書いたかと思うとまた筆を上げて、横一線をなかなか書かない、結局、斎藤茂吉と書くまでに5分ほどかかったという話。



人と話すときにぺろりと舌を出して話を聞くという面白さ、などなど、どれもとれも謹厳実直がユーモラスになっていて、奇人たる資格満点ですね。



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