書き癖あれこれ

無くて七癖あって四十八癖てなことを申しまして、癖なんか無いという人でも七つくらいは癖があるそうです、と書くとまたまた落語の枕みたいですが、確かにそうですね。口癖、足癖、手癖、色々ありますが、書き癖などもそのひとつです。

作家によっては、愛用多用する言い回し、書き癖があるようです。

有名なところでは宇野浩二の「閑話休題」でしょう。これに「あだしごとはさておき」と振り仮名を振ったりしていますから、嫌でも目に付きます。脱線した話を元に戻す時に使いますね。

宇野の友達、芥川龍之介の小説を読んでいると、やたらと「のみならず」という言葉が出てきます。後期ほどその傾向は著しく、「或る阿呆の一生」では僅々一頁の中で二、三回使われていた事があったように思います。芥川では「畢竟(ひっきょう)」もお馴染みですね。

石川淳は何と言っても「さればさ」。会話の中に多用しています。これが出てくると、話が急に江戸時代の古風で毒々しい、歌舞伎みたいな色合いになるような気がします。効果的です。

こういう言い回し、書き癖みたいなものがかもす雰囲気が積み重なって、作家の文体の基礎を作って行くのだと思います。






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