吉行さん

今日、4月13日は作家の吉行淳之介の誕生日です。1924年生ですからちょうど生誕100年になります。その割には出版の世界でも、これといったイヴェントもないみたいですね。少し不思議。



昔だったら生誕100年記念で大規模な全集が出たりしたものですが、この人、生前にすでにかなり完備した吉行淳之介全集が合計3度、短編全集が2度、長篇全集が1度、エンタテインメント全集が1度出版されていますから、今更という感じかもしれません。



「夕暮れ族」「すれすれ」などといった洒落た言葉をはやらせたりもしました。銀座のクラブでのマナーにかけては達人だったようで「ももひざ3年、しり8年」なんていう教訓も残しています。ホステス相手にさらっとまったく嫌味なくタッチするにはそれくらいの年季がかかるらしい。



お父さんが作家、お母さんが美容師のあぐりさん、妹二人が詩人小説家と、女優というように、才能のある人ばかりの一家でした。



本人は遊び人で紳士で対談の名人、文章の彫琢にかけては文壇随一と言われていました。今はあまり読まれていないのが残念。



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良い文庫

「日本の古本屋」に音楽文庫をたくさん登録しました。一昔も二昔も前に音楽之友社から出ていた、クラシック音楽に特化した文庫シリーズです。この文庫本でしか読めない本もあり、今でも需要はあると思います。



大田黒元雄や堀内敬三といった、音楽啓蒙書をたくさん書いた人の著作が多いのは仕方ないのですが、そういうのは掘り下げも浅く、流石にもはや生命を失っていると思います。反対に、作曲家のワーグナーが書いた「指揮について」なんかはちょっと他で手軽に読めないので貴重です。



猫が鍵盤の上を歩こうが、名ピアニストが弾こうが音は同じという主張で有名な兼常清佐の著作や、文学に関係したところではホフマンの「音楽小説集」などというタイトルもありました。これらもちょっと珍しい。



まあ、昔は良い文庫が出ていたものです。



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安部さん

今日は安部公房の誕生日です。1924年生まれですからちょうど生誕100年になりました。私の若い頃は新潮文庫で彼の作品がたくさん文庫になっていて次から次と読んだものです。



「砂の女」と戯曲「友達」に最も感心したことを覚えています。「第四間氷期」もSFチックな内容に魅せられました。文庫本のカバーに奥さんの安部真知さんの不思議な絵が使われていたのが懐かしい。「箱男」辺りまでは何とか読みましたが、次の「密会」からなんとなく読むのが面白くなくなり、以後は読者とは言えなくなりました。



でも世間では川端の次にノーベル文学賞を取るのは安部公房だと言う評判で、三島よりも現実味がありました。私もそれは認めますが、やはりピークは「箱男」にゆくまでだと思います。



生誕100年を記念して新潮文庫では今月の新刊で、久々に彼の遺作「飛ぶ男」を出しました。平成7年に「カンガルー・ノート」を出して以来ですから実に29年ぶりということになります。



読んでみようと思います。



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隆さん

昨日、2月28日はフランス文学者の辰野隆の命日でした。1964年に亡くなりましたから没後60年です。彼は東京駅や日銀本店を設計した建築家、辰野金吾の息子でした。



自身は東京大学文学部のフランス文学科を出て、母校の教授として大勢の人材を育てました。その中には渡辺一夫や小林秀雄、今日出海、太宰治、福永武彦、大江健三郎など、綺羅星のような人材にあふれています。小林秀雄などは辰野隆からしょっちゅう本を借りて行ってはページの間にフケをいっぱい挟んで返したそうで、そのフケを払い落とすのがひと仕事だとぼやいたとのこと。



また、座談の名手としても有名で、天皇の前で徳川夢声、サトウハチローらと放談したのが「天皇陛下、大いに笑う」という記事にもなったくらいです。またエッセイストとして沢山の著作を残しています。大学の先生で随筆全集のようなものを出したのはこの人が初めてだそうで、それ以後、同種の出版が続きました。



まあ、良き時代の名物教授だったわけです。



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芸術院

先日、新しく芸術院会員に推挙された人たちが報道され、その中に萩尾望都さんと筒井康隆さんが入ってました。漫画家と小説家ですが、大雑把に言うとお二人共SF畑と言っていいでしょう。



筒井康隆さんはお若い頃は何度も直木賞の候補になりながら受賞せず、その鬱憤をあからさまに小説にしたり、日記として発表したりされていました。寄席の例えでいうと正統な落語が芸術で、手品や漫才、音曲物などは色物として、一段低く見られていた時期がありましたが、SFはまさに文壇では、そんな扱いを受けていたとおっしゃるのでした。



それが「夢の木坂分岐点」が泉鏡花章を受賞した辺りから評価が変わってきて、新潮社の純文学書き下ろし作品シリーズで「虚航船団」を出して完全に文壇の正統的位置を占めました。



それが今回は芸術院会員です。筒井さん本人はおかしくてたまらないだろうと思います。筒井さんご自身は書くものも考え方も変わっておられないからです。



つい先日、最後の小説を発表されたばかりですが、そんなことを言わずに、相変わらずのショッキングな作品を芸術院会員として発表していただきたいものです。



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