偉いな、筑摩書房
新聞によりますと(古いですね)、筑摩書房さんが又しても快挙を成し遂げました。
企画立案から40年越しに、「能楽大事典」を完成、出版したとのことです。昨日の読売新聞の「顔」欄で、編纂者の小林責さんが紹介されていました。勿論、編纂、執筆に携わった方の御努力が大きいのですが、出版社と編集者の忍耐も十分賞賛すべきでしょう。
筑摩書房は以前にも、「本居宣長全集」や「世界文学大系」のように、完結に20年以上かかったシリーズが幾つかあり、その粘り強さは会社の伝統といえると思うのですが、今回は、そのような大規模な巻数の本ではなく、1000頁を超すとはいえ、1巻の書物です。
小林さんも記事の中で「よく出版社があきらめなかったねえ」と語っておられますが、その長い年月は、編纂者、執筆者、編集者(多分、何人ものリレー)の固い信頼、良い本を出すのだという信念の下に毎日が積み重ねられた結果なのでしょう。
ネット上に流れている情報を、適度に整理すれば、短期間に誰でもが専門家のような顔をすることが可能な現代に、こういう本が出たという事を、私はただただ古本屋の店主として、敬服するのです。
これは古本でなく、新本で買いたい一冊です。
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2012年1月31日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:お勧め本
古書即売会 予定 お知らせします
大阪の古本市の5月までの予定がそろいましたので、ちょっとお知らせ。
2月3日(金)~2月5日(日) 天神橋三丁目プチ古書即売会
2月15日(水)~2月17日(金) 水の都の古本展
2月17日(金)~2月19日(日) たにまち月いち古書即売会
3月2日(金)~3月4日(日) 天神橋三丁目プチ古書即売会
3月16日(金)~3月18日(日) たにまち月いち古書即売会
3月23日(金)~3月29日(木) 弁天町オーク200古本祭
4月7日(土)~4月14日(土) ツイン21古本フェア
4月28日(土)~5月3日(木) 第10回記念四天王寺春の大古本祭り
こういう予定になっています。皆様の御予定表に書き込んでいただけたら幸いです。
万一、変更あればまたこのブログでお知らせしたいと思います。
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2012年1月30日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:即売会
振動厳禁
昨日で1月のツイン21での即売会は終了いたしました。寒い中、ご来場ありがとうございました。
古本屋さんは、即売会には、自分の運べる限度ぎりぎりの本を持ってきます。補充もしますので、会期が終了して持ち帰る本の数はあまり減ってません。来た時と同じように、そろそろとスピード控え目に帰ることになります。過積載にならぬように、気を付けてるつもりですが何しろ本は重い。ギシギシと車がきしむ音を立てるとびくっとします。
先輩の本屋さんから聞かされた、バネが折れたとかタイヤがパンクして立ち往生したとかいう苦労話が頭をよぎります。大体が通いなれた道が多いので、できるだけ、車が不用意にバウンドしないように、選んで走るのです。
岩城宏之さんのエッセーにある、ハープを運ぶ運送屋さんの話を思い出しました。
オーケストラの中で弾くにせよ、リサイタルにせよ、ハープ奏者は自分のハープを使うそうです。普段は自宅にあるのでしょうから、その都度運ばねばなりません。自分で運ぶ人はほとんど無く、運送屋さんの出番になります。東京の話でしたが、専門の業者さんが一軒あるとのこと。通常は普通の物も運んでるが、「ハープ運んで頂戴」とご指名が来ると、待ってましたとなるのでしょう。
ハープは振動を与えてはならないそうです。大体、楽器はデリケートですが、ハープは図体も大きいので、特に気を使うそうです。ですから、コンサート会場までの道路状況、道の凸凹具合などはすべて事前に調査済みとのこと。しずしずと、凸凹を注意深く避けながら、しかし迅速に運搬するとのことです。プロの仕事ですね。
本はそこまで神経は使いませんが、車のギシッ、ミシッはいやです。
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2012年1月29日 | コメント/トラックバック(0) |
描かれた病気
子供の頃病気がちだったせいか、小説でも、病気の事が書かれていると気になります。
病気自体をテーマにした小説もかなりあります。私の見るところ、病気を描いて良い作品を多く残した作家は、吉行淳之介さんと三浦哲郎さんの二人です。
特に三浦哲郎さんの連作短編集では少なくとも一編は、必ずといってよいほど病気がテーマになっています。
「野」「拳銃と十五の短編」などの短編集中の病気物は特にすばらしい。
淡々と病状推移を描きつつ、心のざわめきやふとした気分の変化などが鮮やかに表現されています。治ったとも、治らなかったとも判然としないまま終わりますが、物足りなさは微塵もないのです。
エッセイにも「母の妙薬」という名品を残されています。これは三浦さんの母親が行者のような人から、何かのお礼に伝授された「目星」を治す秘術の話で、煙草のヤニを使う話でした。
吉行淳之介さんでは、「目」がほぼ一冊丸々、白内障の治療の話。これも良かった記憶が残っています。
お二人とも、病気を描きつつ陰にこもらず、病状のレポートは冷静、からりと乾燥した文体は再読、三読に堪えると、ご推薦いたしましょう。
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2012年1月28日 | コメント/トラックバック(0) |
実名報道
おくだ書店さんがブログを再開されていました。
おくださんのブログは文章がテキパキして無駄が無く、からりとしています。少しぼやき節が入るのもユーモラスな味があり、かねてからファンです。もう一つの大きな特徴は、実名の店名、氏名入りというところでしょう。
ブログでは、実名を避けてイニシャルを混ぜたり(池崎をI崎に)、ニックネームで書いたりが多いのですが、おくださんはそんな手段は用いません。正々堂々、青天白日の元に神戸組合や各即売会の様子がさらされます(時々は大阪組合も)。古本屋さんのブログは、古本屋さんが愛読者の事が多いので、イニシャルにしたところで、それが誰であるかは一目瞭然ですので、いっそ実名の方がサバサバしているかも。もちろん、実名が出たからといって問題になるような内容ではありません。たとえて言えば井伏鱒二の市井物みたいな感じ。ペーソスのあるアットホームな感覚と言えましょうか。
アットホームといえば、ディックさんのブログも、ご家庭の事を季節に応じて書かれていて、大変好ましく拝見しています。奥さまの事を「山の神」と称されて、ブログに再三登場されていますので、お会いした事は無いのですが、何か懐かしい。庄野潤三の小説みたいな感じ。
象々さんのブログは一見、酔っ払いのクダに見えたりしますが、とんでもない。文章の隅々まで神経が行き届いて、繊細きわまりなし。軽るみの中に真理を流し込み、洒落のめす技巧は天下一品です。とてつもなく厳密で真面目なのです。
皆様、古書店主の文章の至芸、一度ご覧になってください。
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2012年1月27日 | コメント/トラックバック(0) |