また月報ばなし





先日、月報の事を書いた時、毎月配本される文学全集に挟まれている月報をなくさないために、全集完結後に月報をまとめて製本することを紹介しましたね。



ここに挙げた写真がそのサンプルです。上の方は筑摩書房がその全集、世界文学大系を再出版したときに別巻として付けたものです。下は同じ全集のばらばらの月報を個人が製本屋に持ち込んで製本してもらったものです。



筑摩のものは本として作っていますから通してのページ数がふられていて、総1288頁です。最初に目次もつけられていて、第1回配本ドストエフスキーから最後の第102回配本ディケンズまで配本の順番が判ります。



個人で製本されたのも内容的には全く同じなんですが、月報そのものを製本していますから、その時々の印刷の薄い濃い、紙の質の微妙な違いなどがあり、不思議と人懐こい感触です。しかも製本屋さんがしっかりした仕事をしていて、この分厚い形で背の丸みもきれいに出て、金文字も美しく本としての格はこちらの方が上です。



こんなのがぼちぼち溜まってきていますので、少しずつご紹介したいと思います。



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月報ばなし

月報が好きです。月報と言っても、ある種の研究機関、業界団体などの組織が毎月出す、一種の報告書ではなく、昔の文学全集や個人全集が1冊ごとに挟み込んでいた別冊付録みたいな読物の事です。



大抵、文学全集だったらその巻に収録されている作家についての回想や簡単な作品論などが、8頁から16頁くらいにまとめられています。私が月報を好むのは、そんな薄っぺらい中に硬軟取り混ぜた短い読物が詰まっているさまが、松花堂弁当みたいに美味しそうに思えるからです。私は弁当大好きなんです。



本体に挟み込んでいるだけですから、いつの間にか抜け落ちる場合もあるでしょう。全集物などでは、これがそろっているかどうかで、古書価も少し変わります。



昔みたいに本を大切にする風潮があったころは、月報だけを自分で綴じたり、製本屋で本にしてもらったりすることもあったようです。出版社の方で全集完結後にその月報をサービス価格で製本する、なんてこともあったみたいです。



最近、文庫本の世界でこの月報が見直されているようで、昔の個人全集の月報などが講談社の文芸文庫でつぎつぎ文庫化されています。ついこの間、昭和20年代に出された中央公論社版の永井荷風全集の月報が中公文庫で文庫化されました。岩波版の荷風全集は入手がたやすいですが、中央公論社版はちょっとお目にかかれませんから、その月報はなおさら貴重で、文庫になったことを喜ぶ読書家や研究者も多いと思われます。



目の付け所、企画の勝利ですね。



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あれれ、同じ



上の本は「現代家庭 副業案内三百種」昭和12年 雄恒社から出ています。書庫の奥から出てきました。ちょっと面白そうな本ですが、この本を見た時「あれ、同じような装幀の本があったな」と思い出しました。確か芝居の全集のはず、と探してきた本が下です。





これは古本屋ならおなじみの本です、円本の一種で春陽堂から出た「日本戯曲全集」の一冊です。昭和4年に出ています。デザイン、色、手触りなど完全に同じです。これは芝居小屋の引き幕を図案化したもので、よく見ると幕の後ろから幕を引くため、手で幕の一部を握っているという、凝ったデザインです。



8年ほど後から出た「副業案内三百種」が、なぜ芝居の本、しかも全集の装丁を使っているのか、全く訳が分かりません。全集が思ったほど売れなかったので装丁用の布地が余って横流しされたのを転用したのかな。



まあ昔はいずれの分野ものんびりとしていたのだと思います。



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病院へ持ってゆく

入院中は暇だから読書やDVDを楽しめるかと思っていたら、意外とそうでもなかったです。やっぱり病気が病気でしたから、身の行く末を考えたり、目前の仕事をどうしようかと思ったりで、案外ぼんやりしてしまうのです。そこへ、検温や血圧測定やレントゲンや血液検査や、などがひっきりなしに入り込みますから結構忙しい。



結局DVDはアメリカのTVシリーズの「Xファイル」と「ホワイトハウス」を各1シーズンとか、フランス映画の「恐怖の報酬」「北ホテル」を見た程度です。結構見てますかね。特にM・カルネ監督の「北ホテル」は感心しました。各俳優が見事で、特にルイ・ジュヴェの抑えた演技にしびれました。セットも素晴らしくバリの北外れの町のうらぶれた佇まいが、おフランスでした。



本は歳時記にしようかと思ったのですが、山本健吉が編集した「日本詩歌集」という800ページを越す分厚い文庫サイズの全集端本を持ってゆき、楽しめました。記紀万葉の古典から現代詩歌まで、和歌、俳句、狂歌、民謡、川柳、詩、短歌などが収録され、スキマ時間の拾い読みにもってこいです。



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変な全集

買取にお伺いすると、お客様の御都合で、どうしても持って帰ってほしいという本を、買い取る本と一緒に出されて困ってしまうことがあります。半ば条件みたいに持ち出されると、断ることもできません。



先日も、平凡社の「世界名作全集』をごっそりと持ち帰りました。全70冊と別巻が3冊付いていました。ご存じの方もおられると思いますが、平凡社が昭和33年から昭和36年頃にかけて出した、当時流行りの文学全集の一種です。これは世界文学と日本文学が一つの全集に混在しており、おまけに判型が文庫サイズ、それでも布装の厚表紙、箱入りという、空前絶後というべき内容と外見の全集です。かなり変わっています。



百均などの棚や台で一度くらいはご覧になったことが有ると思います。濃い小豆色の装丁で一冊が実に分厚い。そこへさして世界文学の大長編、「ジャン・クリストフ」や「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「風と共に去りぬ」「静かなるドン」「大地」など、日本文学では「源氏物語(現代語訳)」や「夜明け前」「人生劇場」などを全3冊や全2冊で収録したものだから、他の作家たちは一人一作品みたいな収録のされ方で、これも不思議な感じでした。



いま、大長編のラインアップを挙げましたがこれもよく見ると、他社の全集ではあまり見かけない作品が混じっています。尾崎士郎の「人生劇場」です。これを2冊を使って収録するのは実に珍しい。「クゥオーヴァーディス」「エジプト人」各1冊などという、他の全集には絶対に収録されない作品もあります。昔はこの2冊だけ古書価が高かった記憶があります。



この全集は他にも「家なき子」や「アルプスの少女」「若草物語」「小公子」「子鹿物語」「風の中の子供」「三太物語」などの児童文学も多数収録していて、当時の朝日新聞の書評欄で「お子様ランチ」と揶揄された、と平凡社の社史にも書かれています。私なら、デパートの大食堂、と言いたいところです。



ともかく変な全集ですが、今となってはそのユニークさがかえって貴重かもしれません。月報も力を抜かずに毎巻8ページで挟み込まれています。



お客様に、私の全集好き、厚い本好きを見透かされたみたいな気がしますが‥。



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