闘牛とハンニとマッカーサー
先日の出張買取の中に、昔、大阪で出ていた夕刊紙「新大阪」の昭和22年1月から半年分のコピー合本がありました。
パラパラめくっていると、新大阪新聞社主催「南予闘牛大会」の記事がでかでかと何日も掲載されているのが目に付きました。
あー、これが井上靖の芥川賞受賞作品「闘牛」のモデルになった大会やな、と思い出しました。
この闘牛大会は、当時起こった地震の救援金を集めるために同社の小谷正一が企画し、昭和22年1月25日から27日まで西宮球場で開催されて、大変な評判だったものです。大会の前から終わるまで、連日大きなスペースに闘牛の写真や記事をたくさん載せた為、「牛新聞」と当時言われたらしいです。
井上は、実際の大会の経緯をほとんどそのままに物語を展開して、小谷をモデルにした主人公の恋を小説の筋にからめました。
井上靖は小説では、期待の最終日の日曜に雨が降り、興行的には失敗として小説をほろ苦く終えていますが、実際は最終日の翌日月曜も闘牛試合をしていて大成功にも見えます。
現資料(コピーですが)に当たると、いろいろなことが判ってきます
ちなみに同時期の記事として、作家、相場師、新聞社オーナー、愛国者、反戦家など複雑な顔を持ち姿をくらましていた伊東ハンニが突然現れたことや、2月1日にはマッカーサーがゼネストを中止させたリ等が載っていて、戦後の落ち着かない世相が実感できます。
この夕刊「新大阪」全体を扱ったのが、足立巻一さんの小説「夕刊流星号」です。
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織田作が
大阪市住之江区へ出張買取に伺いました。
前回、出てこなかった資料を探し出していただきました。
詩人のお父様に宛てられた手紙や葉書など。
ある評論家が昭和15,6年頃の中之島界隈を回想した手紙がありました。
その中に「朝日ビル1階の本屋で、織田作(織田作之助)が「夫婦善哉」の売れ行きを、その減り具合を私(筆者)に訊ねたことを思い出す」というフレーズが出てきます。確かに「夫婦善哉」は昭和15年に初版を出しています。
この評論家は「夫婦善哉」が新刊として積まれている本屋で織田作と肩を並べて立っていたのですね。
文学史の現場に潜り込んだ気がしました。
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残念ながら正解
絵や彫刻の写真をぼんやり眺めるのはストレス解消の有効打です。
私の場合、ギリシャ・ローマの昔から現代まで万遍なく好きですが、やっぱりルネサンスから後期印象派あたりの間が親しみやすい。
特に19世紀末前後にパリでうごめいていた画家群は画家同士の関係も親密で、絵を見る以外の楽しみもあります。
今日も今日とて、ピサロ展のカタログ末尾の年表を眺めていると、1889年10月の記事に「ピサロは、精神的にダメージを受けていたゴッホにオーヴェールの医者のガッシェを紹介し、その上、ゴッホ本人も自分の家に引き取って世話をしようとした」旨の記述がありました。
結局ピサロの妻の猛反対で、引き取る話は実現しませんでした。
ゴッホは翌年の7月22日にオーヴェールでピストルで自分を撃ち、7月29日に亡くなります。
ピサロの親切に、晩年のゴッホは喜んだでしょう。
ただ、引き取りを断固拒否したピサロ夫人の判断は、家庭を守る主婦として正しかったというほかありません、悲しくも、そして残念ながら。
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かっ飛ばす
今年は高校野球100年の記念の年との事です。
高浜虚子の自伝に目を通していると、中学の頃、郷里松山の練兵場かどこかでバッティングの練習をしていたことが書かれていました。
明治23年頃のことです。
ある日、仲間と練習していると、通りがかった年上らしい何人かの学生が近寄ってきて、その中の一人が、ちょっと道具を貸してほしいと言いバットの素振りを始めました。
そして、他の人達を守備につかせると、トスバッティングでしょうか、ガンガンとかっ飛ばし始めたとのこと。虚子たちの飛距離を遥かに越したらしいです。
兵児帯を巻いて、夏にもかかわらず長袖シャツの手首のボタンもきっちりとはめていたのが印象的だった、と書かれています。
後で、その人が正岡子規だったと判ったそうです。
「野球」という言葉の産みの親でもある子規は当然、野球殿堂入りもしています。
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置場所が
昨日は大阪古書組合の市会へ。
先日の出張買取の品物を組合5階の倉庫へ運び込み。
知らない間に迫りつつある「下鴨納涼古本まつり」に向けた仕入れができたらと思いつつ入札。
何口か落札できて、でも、また置き場所を工夫しないといけません。
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2018年6月26日 | コメント/トラックバック(0) |