先駆者

エッセイが好きで色んな分野の人のものを乱読しています。小説家や評論家、学者などは筆を持ち慣れているのでエッセイをものす人も多く、よりどりみどりです。それ以外の芸術関係の分野ならば画家の分野に名エッセイストが並んでいます。代表的な人に中川一政、鏑木清方、小出楢重、鍋井克之、藤田嗣治等、枚挙に暇がありません。



音楽部門でも古くは宮城道雄から、岩城宏之、芥川也寸志、武満徹、青柳いづみこ、中村紘子など多士済々。私が今回ご紹介するのはピアニストの園田高弘です。



今でこそ日本人演奏家は世界の楽壇を駆け巡って演奏していますが、1950年代はこの園田高弘が一人で頑張っていました。つまり単発的に演奏会をするのでなく、向こうの音楽シーズンの中で途切れること無くコンスタントにお声がかかる演奏家としては、小澤征爾氏以前は園田高弘唯一人だったと言えます。



若い頃のお顔は若い頃の遠藤周作と瓜二つで、笑えるほど似ています。彼のエッセー集はたった2冊しか無いのですが、その1冊、「音楽の旅」みすず書房刊は今読んでもみずみずしく、文庫化してほしい本です。



正に先駆者としてヨーロッパ楽壇に打って出てゆく有様がビビッドに日記形式で綴られていて、誠に清々しい。その不安、希望がない混ぜになった心理が見事に表されていて、ヨーロッパと日本という、古くて新しい問題の切り口が鮮やかに示されています。



一読をオススメします。当然古本屋さんで探して下さい。



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