万愚節
4月1日。新しい年度になりました。泉南地方はよいお天気です。
英文学者で随筆家の福原鱗太郎さんは、エイプリル・フールのことを「万愚節」と表現されていました。
福原さんが愛したイギリスの文人チャールズ・ラムが、ある年の4月に出た雑誌に、「All Fools Day」を書きました。この文章は後に「エリア随筆」と言う本に収録されましたが、その「All Fools Day」の章を、福原さんは「万愚節」と訳されて、その味わいを名著「チャールズ・ラム伝」で綴られています。
歴史上の色々の愚かしい人のエピソードを列記したあげく、「世の中は天才や英雄で作られているのでなく、無数の普通の愚かしくも愛らしい人間によって作られている。だからお互い愚かではあるけれども、にっこりしながら生きてゆこうよ。私は愚人が好きなのです」ラムは静かにそう語っていると福原さんは書かれています。
福原さんの「チャールズ・ラム伝」によると、ラムは1775年にロンドンで生まれ1834年に没。東インド会社(南海会社)に会計係として長く勤め、精神の不安定な姉の面倒を見ながら市井に生きた人です。ラムは生涯結婚せず(たった一度だけ、ある女優に手紙でプロポーズして手紙で断られました)、酒と煙草と友人とのささやかな交友を楽しみに、人間を愛して質素に暮らしました。最後は姉と同じように、少し精神状態が不安定になって死んだそうです。
姉弟合作の「シェイクスピア物語」が有名です。自身の作品は先に挙げた「エリア随筆」、「続エリア随筆」があり、イギリスの随筆文学の代名詞と言えるでしょう。
福原さんも「われ愚人を愛す」という書名のエッセイ集を出されています。
原作者と翻訳者の幸せな、世にも希なるマッチングと言えるでしょう。春の読書に強くお勧めします。うそではありません。
タグ
2012年4月1日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:お勧め本