庶民的

昨日、奥野信太郎さんのことを書きましたが、彼は飛び切りの学殖を持ちながらも、生き方は飛び切りの庶民派でした。ストリップ劇場などにも気軽に出入りして、聞き書きなどを残しています。下世話に通じた学者でした。同じ中国文学者の吉川幸次郎と対照的ですね。



学者の世界では、こうした対照的な存在が同時代に生まれるものです。フランス文学では河盛好蔵と鈴木信太郎が、ドイツ文学では高橋義孝と手塚富雄が、イギリス文学では中野好夫と齊藤勇がその好対照です。前に上げた人が軟派代表です。私は軟派の学者が書く随筆が好みで沢山読みます。



大阪の堺市生まれの河盛好蔵が特に好きで、ほとんどの著作を集めました。彼もフランスの第三帝政時代の文学や社会風俗等については最高の権威なのでしたが、その著作では調べたこと、新しい知見を権威を感じさせない人懐こい筆致で描いて、多くの人に愛読されました。



自分を町人学者、フランス文学の町医者などと謙遜して、ジャーナリズムと学問の両方の世界で一流の仕事を残されました。



秀才学者の影に隠れがちな庶民派学者、あなどれません。



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