エヂソンバンド実用例
いにしえの少年漫画雑誌を愛読していた人は、ページの片隅などに通信販売の広告が沢山出ていたことを覚えておられると思います。
顕微鏡、鉱石ラジオ、体力増強器具など色々ありました。中でも際立っていかがわしくも魅力的だったのが「エヂソンバンド」でしょう。
なかなか文章で説明するのは難しいのですが、早く言えば金属の小さな四角い板をつなぎ合わせて作った鉢巻です。
これを着用すればたちどころに頭脳明晰、心身爽快になって成績がメキメキと上ること間違いなし、とかいうような宣伝文句が幼心をときめかしたものです。ピカピカと銀色に輝く金属の表面がいかにも効果ありそうです。額が冷える→脳が冷える→脳の力がアップする、ということなのでしょう。
かなりの宣伝に比べて私の近辺には、これを買ったという友達も、大人も不思議といませんでした。
ところが思わぬ本の中に実用例がありました。「青野季吉日記」をめくっていたら、第1頁にありました。
昭和14年8月12日「(前略)夜、姉見舞。姉快活なり。エヂソン・バンドをしてゐる姉を見出す。(後略)」
戦前から売れていたのです。女の人も愛用していたのです。まだあります。
同年9月5日「(前略)少し睡眠不足のやうなれど、頭軽し。エヂソン・バンドの功かも知れない。(後略)」
なんと姉弟そろってのご愛用者だったのです。姉が使用していたので欲しくなって買ったのか?もう1か所。
昭和19年7月2日(日)「(前略)久し振りにエヂソンバンドをかける。濡れ手拭の鉢巻と間ちがへたりする。手拭のやうにとった痕がほてらない。やはり多少の効目がある。(後略)」
宣伝に使えそうな感想です。エヂソンバンドは「かける」のです。
それ以後はざっと見たところ記述はありません。日本の戦局が逼迫してきたのでそれどころではなくなったのでしょうか。
日記に書くのですから、青野さんの中では結構、エヂソンバンドの意味は大きかったのでしょう。
青野季吉さんの日記、かなり些細なことまでまめに記録されていますので、一種の風俗史料としても引用できそうです。
タグ
2012年6月2日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |