白昼、外務省で…
昭和26年の「文藝春秋」を読んでいて、興味深い記事を見つけました。
ある海外駐在社員がアモイの路上で誰かに銃で狙撃され、腹部盲貫銃創を負ったのです。
幸い一命を取り留め、日本に帰国したのですが、賠償金交渉が進まない。
間に入った外務省もなかなか協力的な態度を取ってくれないで何年か経ちました。業を煮やした彼はある日、外務省の中で、省内の担当課長の腹部を狙ってピストルを発射しました。
大変な騒ぎです。こちらも腹部盲貫銃創です。意図的に同じ個所を狙ったとの事らしい。同じように命に別条はなく、撃たれた役人は後に満鉄理事として活躍されたそうです。
社員は自首し、裁判の結果、懲役5年が言い渡されました。
海外駐在社員は命を張って海外で仕事をしている、万一の事態が起これば、国がそれに対応できる体制を整えてくれる為の一石を投じる事が出来ればよい、こういう考えから事に及んだので、控訴しないで刑に服したとの事です。
大正年間の話です。
海外で事件に巻き込まれる邦人が、仕事中、観光中を問わず増えつつありますが、これはその早い例でしょう。そして、ドラマチックな形で本質的な問題を提起しているようです。
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2013年7月6日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:古書
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