見届けたい全集
個人全集の売れ行き不振が古本業界では以前から語られています。
特に、漱石、鷗外、茂吉、龍之介、白秋などの、岩波書店から出た全集が人気がありません。
私小説系の作家、尾崎一雄や上林暁、木山捷平、小沼丹達の全集が手堅く古書価を維持しているのと対照的です。
巻数の問題も大きいのかもしれません。
30巻あたりを越えるとスペースをかなり取りますからね。見ているだけで重苦しい。
文芸春秋社から刊行中の丸谷才一全集も全12巻と、実質、選集にしたのは出版社としては賢明な姿勢でしょう。
そんな風潮の中、個人全集としては破格の全40巻(予定)の吉本隆明全集が晶文社から出はじめました。
断簡零墨、書簡までも収めて、完璧を期しているそうです。
そのような謳い文句が踊るさまざまな個人全集が出版各社から相次いで出たのは20年程前までの話。
時計が逆戻りしたような感覚を感じました。
それも晶文社から出るとは意外でした。植草甚一の「スクラップ・ブック」と銘打った軽やかな全集を手がけたイメージと合いません。
本腰を入れて取り組むそうですから、この推移はいろんな意味で、古本屋としても見届けたいと思います。
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2014年3月29日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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