続・ギッシングの小説
さて、女主人公は家賃催促の手紙を書きますが、実に丁寧な遅延を詫びる返事が届き、もうひと月待ってくれとのこと。
しかし翌月も家賃は届かず、彼女は意を決して直談判に出向きます。
奥様が出てきて言い訳を縷々連ねた挙句、使わない部屋があるから、一緒に暮らさないかと女主人公に勧めます。いずれ家賃は必ずお支払いする、そこからあなたの食費と部屋代は引いて計算する等と、奇天烈な提案です。貸している家に間借りするのですから。
普通なら一蹴してしかるべきですが、女主人公は奥様の優しい提案に乗って引っ越してきます。
今の日本人なら、女主人公が騙されるのではと思うでしょう。事実、その家の主人の仕事はうまく行かない、奥様は病気がち、女中は辞めるで、女主人公は精出してこの家族の為に、掃除や育児などに助力を惜しみません。
一時、借家人一家はお金を工面して支払う用意が出来るのですが、奥様が「そのお金を主人の仕事に有利に投資するおつもりはありませんか」ともちかけて、またまた女主人公は同意します。
どうころんでも、まんまと騙されてゆくように見えますね。
ところが終わり近くなって、この借家人家族の主人に遠縁の遺産が入ってきて、奥様の提案どおりの利息の付いた投資金が支払われる事になります。しかしこの一家は他にも借金があるのでそれを払えば無一文になるのですが、約束どおりきれいに払って感謝して家を明け渡す手筈を整えていました。
女主人公は感動して、その家の幼い娘にその金をあげてしまうのです。
どうです、肩透かしを食らわせられたでしょう。結局、すべて善人だったのです。(但し最後の最後で借家人の主人が少しだけ悪い人だったことが、さらっと書かれていますが)
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2015年11月25日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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