串田孫一の予言
生臭い話が続きましたので、がらりと変えて。
串田孫一さんの事。
串田さんの著書は好きで、自然と、よく集まります。最近も「星と歌う夢」という、いかにも串田さんらしい題の本が入りました。2003年に平凡社から出ています。串田さん晩年のこだわりの、旧字体、桝形に近い四六変型版、箱入りの好ましいたたずまいです。もちろん、フランス中世古版画を利用した、お馴染みの自装。
短章が多いですが、どの文章も含蓄が深く余韻に富み、流し読みができません。終わりのほうに作家辺見庸さんとの対談が収録されています。対談をした1995年の回想がされています。ご存じのように、阪神大震災とオウム事件が起こった年です。
辺見「機械は間違えるわけがないというふうな思い込みが、やっぱり彼らにあったんでしょうね、悲しいかな。」
串田「そうですよね。原子力発電所にしても、何かミスがあるかもしれないということは考慮に入れてない。」
自動改札機の導入を巡っての対話の一部です。串田氏が自動改札で、出口を塞がれた。機械のミスだと言っても受け入れてくれない。不正をしたと決めつけられ、串田さんが機械の中を調べてくれと言って調べたところ、切符が詰まっていたことが見つかった。その経験を踏まえての発言です。改札機から、原発へ思考が飛んでいますが、機械の盲信の怖さを、イメージ的に増幅するための飛躍でしょうね。
串田さんのエッセーは甘口と、先入観をお持ちの人は多いですが、実は違います。円熟した大人に本腰を入れて読んでほしい文章が多いです。
タグ
2011年12月8日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:お勧め本