モンゴルの本からチーズへ
江上波夫さんの「蒙古高原・錫林郭爾(シリンゴール)紀行」を少しばかり読みました。内蒙古の東側とのことです。
昭和6年6月下旬、中国の奉天(瀋陽)北方から出発、8月下旬、出発地に帰着の大旅行。江上さんを中心に5人の隊員が、横行跋扈する匪賊を避けながら、蒙古の人たちの温かい応対に感動しつつ、その民族学的な観点から種々記録した、読み物としても大変興味深いものです。ヘディンなどの著作よりも、みずみずしい感性が出ていると思います。
書中、頻出するのが、山羊や羊の乳製品の食べ物。各地のモンゴル・ゲルで出されるのがアラヒーという乳酒や、ホロートという乳餅。基本、酸っぱいらしい。
このあたりを読んで、私は、この秋にご同業のT書房さんから頂いた、山羊の乳から作ったヨーグルトとチーズを思い出しました。T書房さんがどこかで買ったものではなく、ご自身が飼育されている山羊たちの乳から作られたのです。
山羊を飼っている古本屋さん。童話の世界みたいです。世界広しと言え、山羊や牛を飼っている古書店はTさん一人に違いありません。
味がすばらしい。チーズもヨーグルトも山羊臭さが絶無。ただただ゛爽やかな自然の酸味が口中に広がります。
チーズは真っ白で、少し硬めの酒粕のようですが、少しちぎって味わうと、まさしく言葉通りの醍醐味でした。乳脂肪分の少し粉末っぽいのがゆっくりと溶けて、喉に流すのが惜しいほどの味です。何か、清浄な美しい物を食べたような幸福感。
モンゴルのもこんな味かなと想像しています。
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2011年12月11日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:身辺雑記