つながった

最近、ひょんなことから、九州で長く続いた「九州文学」という同人誌に興味がわき、その中心人物であった原田種夫や火野葦平の本を少し読み始めました。とても純真な人たちで、文学としての質よりも、その人間性の素直な喜びや苦しみに魅せられたのかもしれません。



話は変わりますが、昨日、倉庫の整理をしていて原尞の単行本、文庫本がまとまっていたのが目に入って持ち帰りました。どこかの買取に入っていたのでしょう。全く覚えていません。原さんは亡くなられていますが、九州のご出身でハードボイルドの作風で、元はジャズピアニストという事です。



そのエッセー集「ミステリオーソ」ハヤカワ文庫の巻末に、原さんと同じ高校、同じ九州大学を出た中村哲さんとの対談が載っていました。中村さんは言うまでもなくアフガニスタンで人道的な医師として医療問題、環境問題に取り組み、悲しい事にアフガニスタンで銃弾に倒れられました。



その対談の中で中村哲さんは火野葦平の甥だという事が語られていたのです。びっくりしました。私の周りに散在していた火野葦平の本、原尞の本などが不思議な光を出して丸くつながったような気がしました。



こういうつながり、うれしいですね。



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大らかな傑作

今日2月13日は大阪出身の画家、小出楢重の命日です。1931年に43歳で亡くなりました。画業はもちろんのこと、随筆などの文筆でも高く評価されています。この人の息子さんが小出泰弘といって建築家です。絵も描いたそうですが、父親に比べられるからと、建築の道に進みました。



この息子のほうの小出さんに自宅を建ててもらったのが庄野英二さんです。お父さんが創立した帝塚山学院大学の学長をし、童話作家、随筆家、画家としても活躍しました。小説家の庄野潤三さんの兄です。



庄野英二さんに「にぎやかな家」講談社刊という本があります。これはその家が建つまで、建ってからのいろんなことを物語にした作品で、私は大好きです。どういう所が好きかと言えば、建築家も施主も大工もそろっておおらかなことです。



家族がいろんな希望を言って設計を頼んで図面がてきました。敷地の割に建物が大きな気がしたので「入りますかね」と尋ねると「まあ、はいりまっしゃろ」と建築家の返事。後日、三者が現地で杭を打って確認作業をしていると、大工さんが首をひねって、建築家が慌てだしました。図面通りだと家がはみ出ると分かりました。そこで彼は思い切りよく、図面のはみ出す部分に斜線を引いて削ってしまいます。建築家は何もなかったように「大丈夫、これで建ちます」



庄野さんがあきれて「測らなかったのですか」と聞くと、目測だけで大丈夫、と判断していたそうです。建築家もすごいですが、それを許してしまう庄野さんも大人物です。結局出来上がりましたが台所の調理スペースがほとんど無くなり、風呂の脱衣場のスペースが取れなくて居間で着替える羽目になったそうです。



子供たちの絵の先生として長年付き合ってその人間性にほれ込んでいたとはいえ、ここまで大らかになれるのは並や大抵ではありません。この傑作が今なかなか読めないのは残念です。



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長命な女流作家と芥川

ちょっと思いついて、長生きされた女性作家さんを調べてみました。ダントツは佐藤愛子さんでしょう。102歳でご存命です。その次が99歳の野上弥生子さん、同じく99歳の瀬戸内寂聴さん、98歳の宇野千代さん、94歳の佐多稲子さん、93歳の曽野綾子さん、91歳の田辺聖子さんたちが続きます。佐藤さん以外は没年齢です。



この中でちょっと地味なのは佐多稲子さんでしょう。プロレタリア作家としての経歴が関係するのでしょうか、最近読まれているとは言えないと思います。でも作家歴は長く、芥川龍之介や堀辰雄、中野重治たちと交流し回想なども書き残されています。佐多さんは睡眠薬自殺を図ったことがおありだったようです。それと関係した話として、佐多さんの随筆集「ひとり旅ふたり旅」の中に芥川龍之介の自殺3日前に会ったことが書かれていました。



芥川が堀辰雄に、佐多稲子(当時は窪川稲子)に会いたいと言ったので、当時夫だった窪川鶴次郎と堀辰雄に連れられて芥川に久しぶりに会ったとのことです。芥川は佐多稲子さんが自殺未遂者だと知っていたらしいです。顔を合わせると芥川は「あなたの飲んだ睡眠薬は何でしたか」と尋ねたそうです。それから、また死にたいとは思わぬか、とか、その後体は丈夫か、とか質問したとあります。



かなり不躾でその時は佐多さんはびっくりしたらしいです。でも3日後に芥川が睡眠薬自殺したことを聞いて、ああ、と納得したと書かれています。死に損なった人間の顔を見ておこうと思ったのでは、と推察しています。芥川らしい慎重さだとも書かれていました。



興味深い話だと思います。



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ひょっとすると

今日1月14日は三島由紀夫の誕生日とのことです。彼の場合、命日の11月25日の印象が大きいので誕生日がかすんでいました。去年が生誕100年でした。



彼は猛烈な自意識の持ち主だったと思います。なにしろ、生まれた時のことを覚えていると言っていたとか。産湯の時の盥のふちとその向こうに光っている電灯を覚えているらしかったです。そのような景色は想像できます。当時は多くの人も同じような状況で生まれていると思いますから、共同の深層の記憶を語ったのかもしれません。



何しろ頭の良い人ですから、ひょっとしたらひょっとしますが。



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仕返し

1976年と言いますと50年前です。50年前の今日1月13日、作家の舟橋精一が亡くなりました。この人こそ最近は全く読まれなくなりました。生前は文化功労者にもなり、横綱審議会の委員長なども務めました。作家の馬主としても草分け、自家用車を持ったのも草分けなど、物質的には恵まれていましたが、出版社や編集者たちからは敬遠されていました。



何ともわがままだったそうです。祖父は財閥の偉いさん、父親は東大教授、本人も東大卒業と、プライドが高くなる要素に囲まれていました。有名な話ですがある出版社が日本文学全集を企画したところ、彼は2人で1冊に割り振られたのに腹を立てて、自分の作品の収録を断ったそうです。



色んな文学賞の選考委員でしたが、自分の作品が受賞するように圧力をかけることも平気だったそうです。このような姿勢がたたったのか、著名な割に生前、死後を通じてどこからも個人全集はおろか、著作集や作品集といった形でさえ出ていません。



仕返しされたんでしょうかね。



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