不思議と良いかも

有名な割に昔も今も、ちっとも読まれていない作家に、宮本百合子があります。以前は各文庫にも収録されていて、立派な完璧な全集も出ていますが、その全集は市に出ていても、今は殆ど見向きもされません。



プロレタリア作家と言われていますが、出自はかなりお嬢様です。父方の中条家はいわば地方の名望家でお祖父さんは湖から水を引いて安積の開拓地を作った名士で自治体を率いたり、地元の農民を育てた人です。母方のお祖父さんは岩波文庫に『日本道徳論』という著作を持つ西村茂樹で、明六雑誌の一員、皇族の教育掛り、貴族院議員、宮中顧問官などを努めた人物です。そしてそれぞれの長男長女の間に生まれた長女が中条百合子、つまり後の宮本百合子です。ちなみにお父さんは中条精一郎と言って建築家で、有名な会社のビルを多く手掛け、慶応大学のあのロマンチックな図書館も彼の作品です。



処女作が17歳の時の「貧しき人びとの群」で、大正5年9月号の「中央公論」に掲載されました。当時の「中央公論」の権威たるや、今では想像もできません。そこに載ることは、一流の著作家であることの証明だったわけです。それ以来、女流作家として先頭を走り続けてきたわけです。結婚したが5年で離婚、大正14年からの湯浅芳子との有名な共同生活(?)を続け、昭和7年に宮本顕治と再婚してからは闘士としての顔も全面に出して、昭和26年に、51歳で病で亡くなります。



私は彼女の生涯をみるとき、なぜか、三島由紀夫を思い出しました。華麗な祖父や父、早熟の天才としての文壇登場、そして創作に際し、母親が当初、過剰なほど干渉したこと、自らの性的性向へのこだわり、強烈な義務感を感じさせる意志の強さなど、共通点が多くあります。政治的には180度正反対ですが。



彼女の後半生の写真は和服姿がほとんどですが、その体型や着こなしを見るにつけて、エプロンおばさんを連想するのは私だけでしょうか。



一度読んでみても良いかも。



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泉佐野市で極美を出張買取

昨日はお昼前から、泉佐野市のご近所へ買い取りにお伺いしました。しょっちゅう利用するスーパーのお隣でしたので、スーパーの駐車場に一寸車を置かせてもらいました。もちろん買い物はしましたよ。



1970年代の男性ファッション誌や車の雑誌、飛行機関係、昭和43年前後の漫画本の初版などが多く、ありがたかったです。さらに、昭和40年に出た少年向けSF全集が、ピッカピカの状態、落書きや名前の記入など一切なく、本体、箱とも日焼けや退色もなく、傷一つ無いのが揃ってありました。びっくりしたことは、元の透明セロファンまでがシワひとつなく本体を覆っていたことです。



これは普通では考えられない事です。多分大切に、読む時はセロファンを外して読まれたのだと思います。読まれた形跡は、スピン(栞の紐)が箱から飛び出していることで判るのですが、約60年近く前の本とは思えませんでした。私が誤ってセロファンを破かないか心配になりました。



珍しいものでは昭和44年の笑福亭仁鶴さんや横山プリンさんのサイン色紙もありました。プリンさん、懐かしいですね。彼と漫才コンビを組んでいた相方の実家のうどん屋さん(大阪市西淀川区)へ、信用金庫の外交をしていた時分、積立の集金や融資の相談をしに行っては、うどんを食べたことを思い出します。



横山ノックが参議院に立候補して、宣伝カーに乗って回っていた時にそのお店の前で停まり「〇〇屋さん!いつもお世話になっています!」と大きな声を張り上げていたことも、昨日のことのように思い出しました。



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名前でびっくり

産業遺跡などへの関心が高まっています。その前段階として、主として明治以後の、色んな用途の古い建築に対する建築学的な研究が進んだことがあるでしょう。私が通っていた大阪市北区の中学校に隣接して、泉布観がありました。



これは近くの造幣局へ来る高官などのための、迎賓施設だったと聞いていました。1871年に建てられた重要文化財で、大阪にある最も古い洋式建物です。これらの歴史的建物を連携して鑑賞する運動があり、ガイドブックも発行されています。



手際よくまとめられていて、全体を概観するのに便利です。西区川口にある日本聖公会川口基督教会も記載されていて、その解説を読んで一寸びっくりしました。1920年に建てられていますが、設計者がウイリアム・ウイルソンと書かれていました。



この名前にピンときた方は文学好きです。あのエドガー・アラン・ポーの小説に「ウイリアム・ウイルソン」があるのです。これは若い医学生のウイリアム・ウイルソンが自分のドッペルゲンガーに取り憑かれて死んでしまう話で、アラン・ドロンの主演で映画にもなっていますから、そちらのほうが有名かもしれません。



その名前を思わぬところで見たものですから、私までびっくりしてしまったわけです。



よくある名前なのかなあ。



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変な全集

買取にお伺いすると、お客様の御都合で、どうしても持って帰ってほしいという本を、買い取る本と一緒に出されて困ってしまうことがあります。半ば条件みたいに持ち出されると、断ることもできません。



先日も、平凡社の「世界名作全集』をごっそりと持ち帰りました。全70冊と別巻が3冊付いていました。ご存じの方もおられると思いますが、平凡社が昭和33年から昭和36年頃にかけて出した、当時流行りの文学全集の一種です。これは世界文学と日本文学が一つの全集に混在しており、おまけに判型が文庫サイズ、それでも布装の厚表紙、箱入りという、空前絶後というべき内容と外見の全集です。かなり変わっています。



百均などの棚や台で一度くらいはご覧になったことが有ると思います。濃い小豆色の装丁で一冊が実に分厚い。そこへさして世界文学の大長編、「ジャン・クリストフ」や「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「風と共に去りぬ」「静かなるドン」「大地」など、日本文学では「源氏物語(現代語訳)」や「夜明け前」「人生劇場」などを全3冊や全2冊で収録したものだから、他の作家たちは一人一作品みたいな収録のされ方で、これも不思議な感じでした。



いま、大長編のラインアップを挙げましたがこれもよく見ると、他社の全集ではあまり見かけない作品が混じっています。尾崎士郎の「人生劇場」です。これを2冊を使って収録するのは実に珍しい。「クゥオーヴァーディス」「エジプト人」各1冊などという、他の全集には絶対に収録されない作品もあります。昔はこの2冊だけ古書価が高かった記憶があります。



この全集は他にも「家なき子」や「アルプスの少女」「若草物語」「小公子」「子鹿物語」「風の中の子供」「三太物語」などの児童文学も多数収録していて、当時の朝日新聞の書評欄で「お子様ランチ」と揶揄された、と平凡社の社史にも書かれています。私なら、デパートの大食堂、と言いたいところです。



ともかく変な全集ですが、今となってはそのユニークさがかえって貴重かもしれません。月報も力を抜かずに毎巻8ページで挟み込まれています。



お客様に、私の全集好き、厚い本好きを見透かされたみたいな気がしますが‥。



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ランボーの商才

ランボーという詩人は現代の尺度で見てもかなり破天荒でグローバルでハチャメチャです。1875年21歳までに殆どの詩作を終え以後はヨーロッパ中を放浪し、1880年26歳の時にエチオピアのハラルに渡ってからは、商人としてコーヒー、象牙、麝香などの物産輸入に手を染めたり、武器商人として現地の土侯たちと取引したりしています。



かなりやばい取引が多く、資本の半分を掠め取られたり、契約不履行の憂き目にあったりしています。貿易を担当するフランス政府の上層部に手紙を通じて、便宜を図ってもらうべく精力的に折衝を繰り返すなど、実務者としての能力も大いに発揮しています。その経過は全集のほぼ1巻を占める書簡集に明らかです。



その書簡集には1887年8月23日付家族宛「(前略)仲間の男が死んだため(略)その男の借金を2倍にも支払わせられたりして、(略)苦労しました。いつも腹帯の中に1万6千フランの金貨を入れて歩いていますが(略)8キロも目方があって赤痢にでもとっつかれそうなのですよ。(略)ただ苦しんで死ぬという見通しだけで(略)のこる月日を送ることになるわけ。(略)多分ザンジバルに行くつもりです。(略)しかしそこから支那に行くか、あるいは日本に行くか、どこに行ってしまうかいったい誰にわかるでしょう。(後略)」というような、全くの風来坊丸出しの手紙が載っています。しかし寂しいですね。



流れ流れて明治20年の日本にランボーがやってきたら、どんなだったでしょう。案外、お雇い外人としてうまく立ち回ったかもしれませんね。



しかし残念ながら彼は1891年5月に右脚を切断した体でフランスに戻り、同年11月10日に37歳の生涯を終えます。37,450フランの清算手形が残ったそうです。つまり商才があったということです。



人文書院版「ランボー全集」全3巻を御覧ください。



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