続・庄野家新築騒動

さて、庄野英二さんの新しい家に、英二さんは風見鶏を是非とも付けたいと思いました。

ここら辺りが少し変わっていますね。メルヘン好みです。

普通の鶏の風見鶏を考えていたのですが、建築士さんはさっさと自分のアイデアを図面にして、「どうです、よろしいやろ」と鉄屋さんに注文してしまったのです。

それがてっぺんに星を載せ、その下が三日月。三日月と直角に、両親と三人の子供が手をつないでいるブレートという、とてつもないデザイン。

出来上ってくると、三日月の上1メートルに星が載り、子供の大きさが50センチ、家族全体の幅が2メートルほどもあり、それぞれが風の動きでクルクル回るというドデカイもの。

屋根に取り付けていると、近所の人が「幼稚園でっか?」と尋ねてゆきます。

さすがの英二さんもてれくさくて困ったようですが、次の日、早くも風圧で軸が折れ曲がったそうです。大工さんが叩いて直して又取り付けましたが、今度はヘシ折れて庭に落下しました。

落ちたのが庭で良かったと、さっさと庭の垣根と植木の間に押し込んでしまい、いつしか赤サビに覆われてしまったという事です。

何処かホンワカしたエピソードです。

この陽気な、自信満々の、あくまで善意の建築士さんが、大阪の生んだ素晴らしい画家、小出楢重さんの息子さんです。

この「にぎやかな家」は、庄野さんの全集などでは「童話」と銘打たれていますが、そういった区分にとらわれない、大人にも味わえる名作だと思います。講談社文庫にもなっていましたが、今は出てないようです。講談社文芸文庫辺りで復刊されないものでしょうか。



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