大らかな傑作
今日2月13日は大阪出身の画家、小出楢重の命日です。1931年に43歳で亡くなりました。画業はもちろんのこと、随筆などの文筆でも高く評価されています。この人の息子さんが小出泰弘といって建築家です。絵も描いたそうですが、父親に比べられるからと、建築の道に進みました。
この息子のほうの小出さんに自宅を建ててもらったのが庄野英二さんです。お父さんが創立した帝塚山学院大学の学長をし、童話作家、随筆家、画家としても活躍しました。小説家の庄野潤三さんの兄です。
庄野英二さんに「にぎやかな家」講談社刊という本があります。これはその家が建つまで、建ってからのいろんなことを物語にした作品で、私は大好きです。どういう所が好きかと言えば、建築家も施主も大工もそろっておおらかなことです。
家族がいろんな希望を言って設計を頼んで図面がてきました。敷地の割に建物が大きな気がしたので「入りますかね」と尋ねると「まあ、はいりまっしゃろ」と建築家の返事。後日、三者が現地で杭を打って確認作業をしていると、大工さんが首をひねって、建築家が慌てだしました。図面通りだと家がはみ出ると分かりました。そこで彼は思い切りよく、図面のはみ出す部分に斜線を引いて削ってしまいます。建築家は何もなかったように「大丈夫、これで建ちます」
庄野さんがあきれて「測らなかったのですか」と聞くと、目測だけで大丈夫、と判断していたそうです。建築家もすごいですが、それを許してしまう庄野さんも大人物です。結局出来上がりましたが台所の調理スペースがほとんど無くなり、風呂の脱衣場のスペースが取れなくて居間で着替える羽目になったそうです。
子供たちの絵の先生として長年付き合ってその人間性にほれ込んでいたとはいえ、ここまで大らかになれるのは並や大抵ではありません。この傑作が今なかなか読めないのは残念です。
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