カラヤン再認識
カラヤンという指揮者がいました。世界一有名な指揮者だったといえるでしょう。ヨーロッパ中の一流楽団や歌劇場の有力ポストを独占して、帝王と日本では呼ばれていました。ナチスとのかかわりなどもとやかく取りざたされ、スポーツカーや自家用ジェット機を乗り回し、奥さんはパリのファッションモデル、と音楽以外の面での露出も際立っていました。
しかし音楽家ですから、最後は音楽で勝負になるのですが、特に日本ではアンチ・カラヤンと言って、彼の音楽を通俗的、表面的と、嫌う人たちが大勢いました。私も少しその気持ちを持っていました。とりわけ目をつむって指揮するのがキザで嫌でした。出てくる音楽も確かに磨かれていましたが、感動的とまでは感じなかったです。
彼の作った音楽映画、というのか、オーケストラを指揮している映像作品が作為的でこれも気に入らなかった。自然な演奏風景ではなく、楽員をパートごとに分けて変な台の上に整列させたり、自分のアップや楽器のアップが多くて、見ていて音楽に集中できません。
したがって彼の音楽的才能には長年疑問符をつけていたのですが、最近、ユーチューブで彼の指揮を見てちょっと驚きました。晩年、プッチーニの「トスカ」を指揮した映像ですが、暗いオーケストラピットの中のカラヤンだけを2時間近く、最初から最後まで真正面から映したものですが、これがなかなかすごかった。暗譜です。オペラを暗譜で指揮する指揮者はあまりいません。ちょっと腰掛けるバーみたいなのに寄りかかって、最後まで立っていました。鼻水が垂れるのか、左手の袖でしきりに鼻をこすり上げます。眼もかっと見開いています。指揮台から降りる時に腰が痛いのか辛そうでした。オーケストラへの細かい指示、歌手へのアイコンタクト、完璧でした。1989年の収録ですから81歳で亡くなったその年の映像です。
鼻水が出ようが、腰が痛かろうが、オペラを指揮するのがうれしくて仕方がないという感じに見えました。やはりただモノではありません。ちょっと見直しました。
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2024年11月13日 | コメント/トラックバック(0) |