うっかり褒めると
今の日本で首相と言われている人は、どことなく川端康成に似ているなと思うときがあります。どこを見ているのか判りにくい焦点が定まらない眼。なんとなく粘りつくようなだるそうな抑揚のない喋り方。顎から首の線。川端さんのファンの方には怒られるかも知れませんが私の印象です。
そこで、川端さんの弟子を自称していた作家の澤野久雄さんの「川端康成点描」と言う本からのエピソード。
川端康成さんの家で、澤野さんの前に李朝の扁壷が置かれました。「良い壺ですね」と澤野さんが褒めると「お持ちなさい」と川端さん。慌てて固辞すると、「それではこれは?」と別の壺が運ばれる。「とんでもない」と言うともう一つ壺が目の前に。
最初の壺を褒められたので「持ってけ」と言ったら断られたので、壺が気に入らないのか、と川端さんは思ったらしい。だから次々と気に入りそうな壺を並べてくれたのだ、と澤田さんは気が付きます。そこで観念して「最初の壺をいただきます」と申し出ると、川端さんは笑みを浮かべて手ずから包装して風呂敷に包んで持たせてくれたそうです。
美しいものを見て褒めるということは、欲しいに決まっていると、川端さんのような美の達人は思うので、うっかり褒められないというお話でした。
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2021年2月17日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |