住宅顕信
初めてその名前を見たとき、不動産関係の会社だと思いました。
住宅顕信(すみたくけんしん)
「大東建託」によく似た、がっちりした音(オン)の響きもその雰囲気です。でも、違っていました。俳人の名前だったのです。顕信は得度してからの名前です。本名は住宅春美さん。男の方です。
一冊の句集「未完成」を残して、昭和62年に25歳で病死しました。
死後一時、ブームになりましたが、最近はあまりその名を聞かなかったのですが、読売新聞日曜版の「異才列伝」に先々週登場しました。そこでは彼の代表的な句
捨てられた人形が見せたからくり
鬼とは私のことか豆がまかれる
点滴と白い月とがぶら下がっている夜
ずぬぶれて犬ころ
などが紹介されていました。私は他に、以下のような句が好きです。
あけっぱなした窓が青空だ
夜の点滴にうつすまがった月だ
秋が来たことをまず聴診器の冷たさ
ねむれぬ日々の枕うらがえす
そこを曲がれば月を背に帰るばかり
年の瀬の足二本洗ってもらう
いずれも病中吟です。いわゆる自由律俳句というジャンルになるのでしょうが、感性の鋭さが際立っています。
春陽堂と、中央公論社から句集、選集が出版されています。
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2012年2月22日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:お勧め本
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