山藤さん
イラストレーターの山藤章二さんが先月末に亡くなられました。鋭い、そして暖かい描線で人物を描き続けられました。手持ちの山藤本を数えると40数冊ありました。彼の描線、造形、文章がとても気に入っていたのでした。
初期のころは影響を受けたベン・シャーン風のささくれだったペンの味が素敵でした。日本の浮世絵の大首絵からもヒントを得ていたと思います。絵とともに彼の文章と書き文字の洒脱さにも感心しました。彼はイラストにはサインと西暦の年号を必ず入れていました。時事性の強い自分のイラストの賞味期間を意識していたのだと思います。
後期になるにつれてそのこだわりも無くなり、絵のタッチも墨絵風の柔らかさが前面に出てきて、もはやクロニクル風のきつい笑いよりも、人間の持つ本来のおかし味を楽しむ作風に変化したのだと思います。サインは朱印に代わり、日付は不要になりました。
山藤さんは和田誠さんと並ぶ昭和の絵師でした。和田さんは下手に真似る人が出てきていますが、山藤さんを真似る人は出てきそうにありません。
古本 買取 京都市