ぴちぴち
何度か日本文学全集のことを書きました。日本人の全集好きはその出された数を見ても明らかです。古くは昭和初頭から最近まで続いています。その沢山の中でも、異色と言えるのが昭和40年前後に集英社が出した「新日本文学全集」全38巻です。
普通の日本文学全集は大体大雑把に作者の生まれ順に第1巻から割り振られています。第1巻二葉亭四迷集とか坪内逍遥集、真ん中あたりに川端康成集など。最終巻が大江健三郎や、阿部公房など、という感じですね。ところがこの全集、巻立てがあいうえお順なのです。第1巻阿川弘之・庄野潤三集、第2巻鮎川哲也・仁木悦子集、第3巻有馬頼義集、第4巻有吉佐和子集、第5巻石原慎太郎集、第6巻井上靖集、第7巻梅崎春生集ときて最後は第38巻吉行淳之介集となります。実に奇抜です。
まあこれは、収録した作家たちがほとんど差がなく同年配なので、致し方なく五十音順にしたのだろうと思います。学校の教室の出席簿みたいな感じです。身長がわかれば身長順というのも面白いかも。
そして今少し並べただけでも分かるのですが、この全集で初めて全集に取り上げられて、以後、どの日本文学全集にも収録されない作家が目立ちます。第2巻、第3巻がそうですし、他にも西野辰吉、源氏鶏太、高木彬光、島田一男、佐野洋、南条範夫、大原富枝などという作家が収録されています。一口で言うと、推理作家や大衆小説作家が大勢取り上げられているのです。
「新」と銘打っていますから、夏目漱石や島崎藤村はありません。戦後に活躍し始めたぴちぴちした作家たちを積極的に収録しているのです。
古本でもあまり見かけませんから、売れなかったのでしょうが、ユニークさでは抜群の日本文学全集だと思います。電話帳みたいな(古いね)あいうえお順にアイデア賞をあげたい。
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2024年10月24日 | コメント/トラックバック(0) |