読まぬと大損 モーパッサン その2
旦那は借金を返すための借金、手形の書き換え、役所の後のバイト、帰ってからの筆耕の仕事。
奥さんは小間使いをクビにして何から何まで自分でする。屋根裏に引っ越して、重い水のあげおろしに、薔薇色だった爪を分厚く頑丈にしてゆきます。10年経ってやっと最後の1スーまで返し終えて、奥さん、気持ちの余裕を取り戻して公園をブラつきます。偶然に、首飾りを借りた友達を見かけて声をかけますが、奥さんが苦労のあまり老けたので友達は人違いと思います。
「まあ、なんてお変りになったの!」
「苦労したのです。あなたに借りた首飾りをなくして、その返済に」
「だって返していただきましたわ」
「気付かないのも当然ですわ。そっくりのダイヤの首飾りを見つけて買って、それをお返ししたのだから」
「………!」
「でも最近やっと全額返せたのです」
友達は奥さんの手を握り締めて言いました。
「まあ、どうしましょう!私のはガラスの偽物だったのよ、安物の!」
公園で出会ったのが幸か不幸か、微妙ですね。
外国文学、買取いたします。
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2011年9月25日 | コメント/トラックバック(0) |
読まぬと大損、モーパッサン
前回、モーパッサンの小説のような人生、とか書いたので久しぶりに読みたくなって、いくつかの短編を読みました。
結果、モーパッサンを読まない人生は、かなり損をしてるんじゃないかという、圧倒的な印象でした。ドストエフスキーやプルースト、トルストイの話じゃないんです、モーパッサンです。あなどれません。
誰もが何となく読んだ気になっている、「首飾り」という短編一つとっても、二段組みで、たかだか5、6頁の小説の中に、人生の落とし穴がぱっくりと口をあけて、幸福の裏に潜んでいるということを実に皮肉なタッチで描いてくれてます。知らない?では、簡単なあらすじだけ。
実直なパリのお役人さん夫妻が身分不相応な舞踏会に招かれます。奥さんはアクセサリーが無いので行きたくない。亭主が、奥さんの友達のお金持ちのご婦人から借りればいいと入れ知恵。すごく高そうなダイアの首飾りを借りて、舞踏会は大成功。ぐったり疲れて帰ると首飾りが消えています。狼狽した夫妻は全くそっくりな首飾りを宝石店で探し当てて、とてつもない借金をしてそれを買い、何食わぬ顔でお友達に返します。
地獄の始まりですね。次回へ。
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2011年9月24日 | コメント/トラックバック(0) |
九里丸、三亀松読みたいな。part3
後日、本当の母親が赤ちゃんを引き取りに来なかったのか?来なかったのです。結局、九里丸の子供がジュリエットの子供として育てられたのですね。
昭和35年に花月亭九里丸こと渡辺力蔵さんが亡くなります。葬儀の時、あるでっぷりとした中年男が「このたびは」と言いながら帳場の前に頭を下げました。受付の芸人仲間が顔を見てびっくりする。九里丸そっくりではないか。
差し出された名刺には「イモスケ広告社 山口良一」とありました。
この人こそジュリエットが育て上げた、九里丸の忘れ形見であったわけですね。薩摩屋芋助の孫として育ち、東西屋を広告社にしたのです。両親は、息子の顔が段々おもろい顔になって来たので不思議がったそうです。
モーパッサンの小説のような、不思議な芸人譚ですね。
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2011年9月23日 | コメント/トラックバック(0) |
九里丸、三亀松読みたいな。part2
さて、九里丸さんは大阪ミナミが地盤の東西屋さん(チンドン屋さん)の丹波屋栗丸の長男。商売敵のキタの東西屋さんが薩摩屋芋助といい、その娘に恋をします。ロミオとジュリエット。結局うまくゆきません。
即妙の話術がかわれて長じて吉本興業に加わってから、花月亭九里丸になります。お披露目の日、ジュリエットからも激励の花輪が届きます。名前ないけれどジュリエットかららしい。うれしく思います。
吉本の初代社長にかわいがられ、美人の恋人も紹介されたが、おもろい顔過ぎてと、結局逃げられました。ジュリエットに似た女だったので大ショック。気持も荒み、借金もかさんだ時に、社長が全部払ってくれた、そのおかげで死ぬ気になれて、薬を飲んだけれど結局喉をつぶしただけ。早口プラスつぶれた声で半分もお客にはわからないけども、愛嬌があって妙に人気が出ます。
そんな時、逃げた恋人が「あんたの子や」と言って、赤ん坊を押しつけてゆく。思い当たる節もある。
そのすぐ後に本当のジュリエットが「頼めた義理やないけど、この子、暫らく預かって。お父ちゃんのОK出るまで」と預けてゆく。花輪の恩義もあり、他人の赤ちゃんですが預かったが、何とその子はすぐに死んでしまいました。そして、九里丸の留守中にジュリエットが赤ちゃんを引き取りに来た際に、何もかも事情を知っている大家さんが、九里丸さんの子供をジュリエットに渡してしまいます。
後は次回に。
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2011年9月22日 | コメント/トラックバック(0) |
九里丸、三亀松読みたいな。
「三亀松さのさ話」という本が入荷しました。大阪では有名な長谷川幸延さんの作品集です。
副題が「寄席交友録」でして、表題作以外に「桂春団治」「花月亭九里丸」「笑福亭松鶴」というギトギトの大阪の寄席話が入っています。
特に「花月亭九里丸」が良かったと思います。この人は戦前からの漫談家で、寄席関係の著作もニ、三あり懐かしい人です。その生涯の一端が描かれていますが、哀感もあり、笑いもありでお勧めです。
でも長谷川さんの本などは、現代では絶対に文庫化はされないでしょうね。次回少し内容をお知らせしましょう。
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2011年9月21日 | コメント/トラックバック(0) |