政治予想

以前に近松秋江のことを書いた時、柔らかもの、つまり情痴的な小説の書き手として知られているけれど、実は土地探しや保険の吟味なども好きという、ドラスティックな現実的な面があることをご紹介しました。



それをさらに裏付けるように、近松秋江全集第11巻に「連立内閣の役わり」と言うエッセイが載っていました。大正13年8月に設置された加藤高明内閣の顔ぶれを予想したもので、5月の中頃に発表されています。この内閣は憲政会と立憲政友会の連立内閣で、近松はかなり早い時期にその顔ぶれを論評とともに予測しているのですが、第1案、第2案と出していて、相当熱心です。そして第1案で4名の閣僚を的中させているのは驚きです。



新聞などの予測も活用したのか不明ですが、小説家でこんな事が好きな人、そしてエッセイで取り上げる人は、大正時代の作家では聞いたことがありません。



自分の情痴小説はあくまで身過ぎ世過ぎのためで、本当はしっかりした歴史小説政治小説などを書きたいのだと随筆などで述べていますから、彼の本領はむしろそちらの方だったかもしれません。



読めば読むほど奥行きのある作家で、この人、最近は若い人にも注目されだしているので再評価が楽しみです。



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