詩人がねえ

何回か書いたと思いますが、嫌いな言葉の中に「スピード感をもってする」という言い方があります。政治家が多用しています。耳に汚い言葉です。なぜ、「迅速にする」ではいけないのか。「ただちにする」ではいけないのか、理解に苦しみます。



拉致問題も震災復興も 最重要課題でスピード感を持って解決します、と、あの内閣この内閣は何度もしれっと言って根本的にはちっとも進んでいません。迅速に、ただちにする気がない場合に「スピード感」を使っているのだと思います。「感」に逃げ道があるようです。



この言葉を一度でも使用してるのを聞いた政治家を私は信用しません。その人の程度がモロに出てしまうのです。



ところが「わが生活のうた」現代教養文庫という、草野心平の随筆集をパラパラ読んでいてびっくりしました。「一年を吐き出す」という表題の文章の冒頭です。



睦月にはじまる陰暦十二ヶ月の名称のなかでスビード感のあるのは師走だけである。



草野心平がこんなことを書いているとは、こんな言葉遣いをしているとは夢思いませんでした。1964年の読売新聞に発表されていますから、60年近く前にはすでに使用されていたのですね。小学館の「日本国語大辞典 第二版」でも引いたらかなり正確な初出が判るかもしれませんが、かなり古い用例ではないかと思います。



まあ、政治家の使い方と少しニュアンスが違いますが、言葉に敏感なはずの詩人がね、と思ってしまうのでした。

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2022年9月18日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:古書

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