古本と島木健作さん

明治大正時代の小説などが昨今読まれないのは以前からですが、昭和戦前のものもさっぱり読まれていません。大変なベストセラーになったような作品も文庫にさえもなっていません。島木健作という作家がいました。戦後すぐに亡くなってしまったのですが、小林秀雄などとも付き合いが深く、彼の「生活の探求」という本はどの家にもあるという感じでよく売れたそうです。



彼は親戚が古本屋をしていて、一時その手伝いをしていました。その時分の経験を書いた「煙」という短編があります。店主に代わって洋書の業者市へ出向く話です。戦前の市会の様子がうまく書かれていて面白いです。高く入札しすぎたと、不安になるところなど、昔も今も変わりありません。



彼が落札したディケンズ全集に8ページの落札があったので市会に戻って返品を依頼していると、遠くで業者達が「高買いしたのを何ページか引きむしって返品するのもよくある手だな」などと言っているのが耳に入ってきます。狼狽しながら返金を受け取って市場を出るのですが、結局自分は何をしても中途半端、もっと実直に生きようと思って話は終わります。



インテリの弱さがテーマですが、こうした好短編が個人全集でしか読めないのはもったいない話です。



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